イタリアの空 ...di pacifica

イタリア、ボローニャからの日々を綴ります。

AISTUGIA2012 

昨年のボローニャでの総会に続き、今年はフィレンツェにてAISTUGIA(伊日文化研究学会)の総会が行われました。イタリア中の日本研究者が集まり発表をする場、意見を交わす場ということでフィレンツェまで足を運んできました。
オープニングはヴェッキオ宮で、その後はPalazzo Strozzi(ストロッツィ宮)内のGabinetto Vieusseuxでパネルディスカッションが行われた。今回の総会はフィレンツェ出身の人類学者、東洋学者、そしてイタリアにおける日本研究の草分けであるフォスコ・マライーニ氏の生誕100周年を記念し、マライーニ氏をテーマとした。
Gabinetto Vieusseuxにはマライーニ氏の膨大の量の書籍、資料、写真が所蔵されている。

二日目の午前中のパネルのテーマは海女の世界。古典、能、近松門左衛門の作品の中で描かれる海女の姿、そして研究対象、被写体としての海女と研究者達とのアプローチについて考察。このテーマでかなり掘り下げたディスカッションが行われました。正直不思議な世界(もちろん海女の世界のことではなく、学者の世界のこと)、と客観的に思ってしまったりして・・・。
言語学のパネルでは常ごろ研究対象となる敬語に対してぶしつけな言葉遣いScortesiaについての発表はとても興味深かったです。よく興味本意で日本語の罵り言葉を教えて!とか言われるものの、あまり思いつかないし、思いついても意味をイタリア語に訳すとたいした罵りに聞こえなかったりします。(イタリアは相手を侮辱する表現がすっごく豊富なので。もちろん愛情を表現する言葉もね。)今回の発表によると、日本の場合は言葉自体の持つ意味より場面と言い方(丁寧度、声の強弱)によって失礼な表現となるとのこと。たとえば「ふざけんなよ。」は「ふざけないでください。」ということを丁寧じゃない表現で言っているだけ。母親が子供に「ふざげちゃダメよ」といっても罵りになりませんね。それから敬語を使うべきでない相手に、やたら丁寧な言葉遣いをするのは皮肉⇒慇懃無礼となる。などなど。

夜はアルノ川散歩。水辺のある風景は心を潤します。

三日目はマライーニ氏の著書「随筆日本」をテーマに戦時中日本で過ごしたイタリア人についての考察、311の原発事故後の地域住民の生活、これからどう対応していくべきかについての考察が発表され、閉会となりました。
ランチは老舗ワインバーにて。

更に午後は、バリオーニホテルで「日本文学のことばの力」をテーマに学会が行われました。

こちらも古事記から近松門左衛門、話芸それに越境文学など視点はいろいろ。なかでも注目したのは、被災のトラウマに対してことばの力とはを問う発表でした。「震災とフィクションの"距離"」の他、被災者の驚愕、被災地での復興の困難、復活の希望などをテーマにして多数の作品が現れた事実と同時に、長い目で文学や芸術においてこのテーマが発展していく可能性などにも触れた。

全ての発表を聞けなかったのは心残りでしたが、それでも充実した二日間でした。

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